日本学生支援機構への要請

 1月26日に、奨学金返還滞納者ブラックリスト化の撤回と、奨学金の無条件給付をもとめて申し入れにいってきました。現在、日本学生支援機構からの回答を待っています。

 以下、提出した要請文を掲載します。

                                                                                                                                  • -

  2009年1月26日
独立行政法人 日本学生支援機構
理事長 梶山千里 様
                            ブラックリストの会in東京

 
奨学金返還延滞者の個人信用情報機関への登録、および奨学金給付についての要請


 昨年十二月、独立行政法人日本学生支援機構は、奨学金返還延滞者を個人信用情報機関に登録するという施策を発表し、奨学金貸与者からの同意書を回収するなど、すでにその手続きがはじめられていることと承知しています。
 わたしたちは上記の施策(いわゆる「ブラックリスト化」)を許すことはできません。このような教育の歴史上まれにみる愚行を、ただちに中止することをもとめます。同時に、わたしたちは日本学生支援機構奨学金がその名に値するようになることをもとめます。つまり、奨学金が「貸与」などではなく、授業料および生活費の無条件の「給付」となることをもとめます。
 わたしたちの要求は途方のないものでも、現実離れしたものでもありません。機構の調査からもあきらかなように、返還延滞者の約半数が低所得者です。そうした情報を信用情報機関に通報することは、低所得者を社会的に排除することにほかなりません。たとえば近年では、アパートを借りる際にカード審査をおこなう不動産会社が増えています。おそらく今回の日本学生支援機構の施策によって、家を借りることすらできなくなる人たちが続出するでしょう。このような事態をまねくことが、「教育的観点から見てきわめて有意義である」と言えるのでしょうか?また、学生を「ブラックリスト化」するということは、学生を実質的に債券化するということであり、教育的観点から見てけっして許されることではありません。
 そもそも奨学金は、給付が国際的な原則であり、貸与の学費ローンとは厳密に区別されるべきものです。ヨーロッパでは給付の奨学金が主流であり、例外的な米国ですら奨学金にしめる学費ローンの割合は五割にすぎません。公的な機関である日本学生支援機構奨学金が、主として貸与であるという現状は、国際的な現実から乖離した異常な事態であるといえます。
 日本の高等教育は国連の人権委員会より「漸次的な無償化」(国際人権規約13条c項)の批准を勧告されてきました。いうまでもなく、高等教育はすべての人に開かれていなければならないからです。政府は今日までこの勧告を無視していますが、わたしたちは日本学生支援機構による授業料相当の奨学金の無条件の給付が、解決への現実的な方途であると考えています。他の先進国では常識的におこなわれていることからも明らかであるように、財政的には十分に可能なのです。
 学生を借金漬けにして、社会が幸福になることはありえません。高額な授業料と学費ローンの蔓延は異常な事態であるといえます。学生を金銭のくびきから解放し、その力をひろく高めることが必要とされているにも関わらず、今回の日本学生支援機構の施策は、学生のもつ可能性をさらに奪おうとするものです。わたしたちは「ブラックリスト化」の即刻の中止と、授業料および生活費相当の無条件の奨学金給付を要請します。


                  記

日本学生支援機構への要請事項】
1.奨学金返還延滞者の個人信用情報機関への登録、およびその手続きの中止
2.授業料および生活費相当の奨学金の無条件給付

 上記要請につきまして、2009年2月6日までにご回答ください。

連絡先:ブラックリストの会in東京(blacklist@riseup.net)

                                                                                                                                  • -

申し入れの様子です。