不純なる教養

 ブラックリストな本が出たよ!





 思想を、そして大学を讃える十一篇のプロパガンダ・ポエティカ。

 度重なる「改革」による文字通りの無法地帯化、年間で新車くらいする高すぎる学費、 もはや誰にとっても意味のわからない「シューカツ」。

 大学が置かれている状況は、そして、学生をとりまく状況は、ひどいものだ。しかし、「大学」なるものが讃えられるのはまさにこの地点からである。

 「恥辱にまみれている現実の中で、われわれはペシミズムを組織しなければならない」。中世ヨーロッパにおいてサンディカとしての生まれた大学の理念へ立ち返り、大学の、世界の無償性へ。

 すでにある悲しみや喜びを手放さず、各人が今とは別の「神話」を紡ぎだすことを促がす、「不純」なる教養のロンド。どんな振り付けで踊ろうか。


  ( 『怪談 VOL02』 社会哲学研究会、2010年春号)16頁より。